ところが、あるときお母さんの具合が急に悪くなり、
寝込んでしまったのです。
おくめはいっしょうけんめい看病しましたが、
いっこうによくなりません。

「お母さん、私が薬を買ってくるから、待っててね。」

そう言って飛び出してきたものの、おくめの小さな手には、
ほんの数枚の小銭があるばかり。
とても薬なんて買えません。
薬草をさがして、あたりのやぶに分け入ってみても、
おいしげったススキのするどい葉に、手足を切きつけられるだけ。
病気に効きそうな薬草は見当たりません。

途方にくれて、ふらふらと歩き続けたおくめは、
気がつくと、鬼子母神堂の前にきていました。
夕日に染まって赤くかがやく鬼子母神の石像を眺めていると、
とめどもなく、涙があふれてきました。

「どうか、お母さんを助けて下さい。」